厨子・龕・合子 創作のコンセプト

 大切な故人の写真や想い出の品などを納めるための、自分らしい、長くそばに置きたい箱があったらとお考えになったことはありませんか。
 家を継いだり、位牌を守るという立場ではなくとも、心の拠り所として故人をお祀りしたいと考えている方は多いのではないでしょうか。気に入った空間に、大切な人がいるのは、心地よいものです。
 このような考えのもと、私どもは名称を「厨子・龕」として、漆塗りの特別な箱を提供しようと思います。ただし使い方は自由です。キャビネットとしてもお使い下さい。マンションなどの近代的空間に置いても、個性的なインテリアになるものに仕上げました。

 中塗り
(なかぬり)までの基本の造作は、厨子・龕とも輪島塗と同じ堅牢な本堅地(ほんかたじ)にしています。
 蒔絵
(まきえ)の厨子・龕は、安土桃山時代から江戸時代にかけての南蛮漆器(なんばんしっき)を念頭に、螺鈿(らでん)と金貝(かながい)で画面を区切り、各画面に関連をもたせながらふんだんに蒔絵をほどこしました。形式的な文様ではなく、多分に絵画的な手法で季節の植物を描き、蝶やカミキリ虫などの昆虫や蜥蜴(とかげ)を配しています。華美でありながら、落ち着いた静かな世界を感じさせます。
 それに対して変わり塗りの厨子・龕は、江戸時代に刀の鞘に使われた塗りの技法を使っています。変わり塗りは基本的に8種類あり、そこから派生したものが90種、それらを複合したものを加えるとその塗りの種類は無限というものです。種子を蒔いたり、麻布を貼ったり、簪
(かんざし)を転がしたりといった昔からの技法を工夫しながら、簡潔で、かつデザイン性の高いものに仕上げようと試みております。
 蒔絵と変わり塗り、華美と簡潔、この対極の空間から、お心に響く厨子・龕をお選び下さい。

 そのほか甲虫や山椒魚をモチーフにした、合子(ごうす)なども用意いたしました。やはり大切なものを納めて下さい。

 私どもの作る漆の厨子・龕は、いずれも文化財修理の経験の中で見たもの感じたものに力を得て生まれました。今も修理修復の仕事をつづけながら、心をこめて厨子・龕の制作を行っております。木固め
(きがため)から加飾(かしょく)まではもちろん、螺鈿や金貝の種(たね)作りまでも自らが行っております。そのため、二人が丹精をこめて、年間数台ほどしか作ることができません。是非とも末永くおそばに置いていただけることを願っております。