文化財の修理
 
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 更新日04.2.18

和時計文字盤の修理
(わどけいもじばんのしゅうり)

金属に塗られた漆

 江戸時代前期に作られた時計です。この和時計の文字盤部分は銅板に直接漆が塗られていて、強固に漆が焼き付けられているわけではありません。そのため金属との密着が悪く、中心部の赤色漆部分が半分ほど剥落(はくらく)してしまったと考えられます。

剥落止めの留意点

 これ以上の漆塗膜(うるしとまく)の剥落を止めるためには、塗膜を金属面に再密着させるわけです。それに使用する接着剤をどのようなものにするかが重要です。基本的には、可逆性(かぎゃくせい)のある固形のアクリル樹脂(パラロイドB-72)を使用します。それを溶かす有機溶剤(ゆうきようざい)を何にするかが最も重要です。

 揮発の比較的遅いアルコール、キシレン、トルエンなどは、薄い漆塗膜を揮発中にひどく変形させてしまいます。そのためこの度のアクリル樹脂を溶かす有機溶剤は、揮発時間が短く、経験上比較的薄い漆塗膜に影響が少ない、アセトンを使用することにしました。

栃木県足利市 史跡足利学校

一挺天符掛時計
(いっちょうてんぷかけどけい)

漆塗り文字盤剥落止め

全 長:28.5センチ(鐘、脚を含む)
箱部分:縦15.6センチ 横10.2センチ
    奥10.0センチ
修理前状況 全面 修理前状況 下部 ※ 写真をクリ
ックすると大きな画面が見られます
内部
修理前状況 文字盤
修理前状況 文字盤
薄い塗膜が金属面から浮いている状況がよく確認できる。
修理中 修理後
アセトンにパラロイドB-72を溶かし込んだ、アクリル分10%程度の接着剤をつくり、小筆と重し(硬質プラスチック)で慎重に接着していく。 漆塗膜の新たな変形や、塗膜面の必要以上の光沢もなく、接着することができた。
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