文化財の修理
 
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 更新日04.2.18
木彫仏の解体修理
(もくちょうぶつのかいたいしゅうり)
仏像修理について

 寺院やお堂に安置されている木彫仏の多くは、過去に何度かの修理の手を経て今に伝えられています。伝統的な材料である胡粉(ごふん)や膠(にかわ)や漆といったもので、下地(したじ)がつくられたり接着された木彫の仏像は、一世紀に一度くらいの間隔で修理の手が入る必要があります。そうしなければ膠で接着された部分は外れ、胡粉の下地は漆の膜を破り崩れてしまいます。

 私どもは寄木造り(よせぎづくり)の仏像の解体修理に際し、造像(ぞうぞう)当初の技法や過去の修理を尊重して、修理を行っております。下地からつくり直して全体を塗り直すような、必要以上の手を加えることはせず、現状保存を旨として修理を進めております。修理に使う材料も吟味し、できるだけ像の製作当初と同じかそれに近い天然の材料を用いています。また、どのような材料でどのように修理したかを写真に撮り、記録し、報告書で明らかにします。

 仏像修理では、より古いものに目がいきがちで、江戸時代のものはあまり顧みられていません。しかし、この時代の仏像はもっとも多く現存し、直接今につながる歴史を背負っている点からも貴重な文化財です。私どもは、こうした江戸時代の仏像にも力を注いでいきたいと考えています。

光明寺阿弥陀像修理の留意点

 このたびの阿弥陀如来立像ならびに両脇侍の修理に際しては、以下のいくつかの点を中心に修理を実行しました。

 本体の解体は矧ぎ目(はぎめ)で壊れている所だけを解体し、傷ん
  でいない衣の文様を壊してまで無理に行わない。
 過去の修理で肉身(にくしん)に蒔(ま)かれた安価な材料である真
  鍮粉(しんちゅうふん)を、首の後の痕跡をもとに本来の金粉に戻 
  す。
 螺髪(らほつ)に塗られた顔料(がんりょう)を本来の岩絵具の群青
  (ぐんじょう)に戻す。
 足先などの稚拙な後補(こうほ)部分を造り直す
 過去の修理で矧ぎ目の所に施された不適切な胡粉下地と彩色(さい
   しき)
を除去し、隠されていた文様を現す。
 光背(こうはい)の設置の仕方を本来の状態に戻す。
 台座の欠損部分(獅子など)を新補(しんぽ)する。
 台座の金箔がはがれた部分に、過去の修理でそれを補うために塗
  られた不適切な金泥彩色(きんでいさいしき)を除去し、修正する。

埼玉県加須市 遍照山光明寺

阿弥陀如来立像ならびに両脇侍解体修理

本尊像高:79.5センチ 台座高:48.5センチ
光背高:104センチ
修理前状況
本尊修理前 正面 本尊修理前 背面 ※ 写真をクリ
ックすると大きな画面が見られます
過去の修理の際に、当初とは違った真鍮粉が肉身に蒔かれ、それが時間の経過とともに錆びて黒化している。螺髪にも当初とは違った現代の顔料が塗られている。 蓮台(れんだい)のほぞ穴が損傷しているにもかかわらず、光背を立たせるために、見苦しい別材が打ち付けられている。台座の飾りの獅子(しし)や宝珠(ほうじゅ)がいくつか失われている。
解体作業
本尊の解体 台座の解体
台座の修理作業
蓮台の修理
飾りの獅子の新補
一体残っている獅子を参考に、三体の獅子を檜材で新補する。
光背を立たせるためのほぞ穴を新たな檜材で作り、麦漆(むぎうるし)で接着し、焙烙(ほうろく)でいった竹釘で緊結(きんけつ)させる。
本体の修理作業
左手指先の修理 頭部の修理
指先を木屎漆(こくそうるし)で補修する。 頭部前後を麦漆で接着し、矧ぎ目と螺髪を木屎漆で補修する。
尊顔の修理 螺髪の彩色
黒化した真鍮粉を取り除き、首の後の痕跡を基に、漆を塗り金粉を蒔き付ける。 造像当初と同じ群青を塗り、古色(こしょく)を付ける。
本尊修理前 左肩前 本尊修理後 左肩前
過去の修理の際、矧ぎ目の修理が不適切で、衣の文様まで胡粉と顔料で隠されている。 修理の胡粉と顔料を取り除くと、下から当初の文様が現れた。
本尊修理前 右肩後 本尊修理後 右肩後
頭部納入物
本尊頭内部
南無阿弥陀仏の経文
経文には南無阿弥陀仏が千回書かれ、元禄六年(1693)の年号が記されていた。
頭部を解体すると群青色の和紙に包まれた経文が納められていた。
完 成
本尊修理後 正面 本尊修理後 背面
肉身部分と頭部は大修理を施したが、衣の文様などは造像当初を残した修理を行うことができた。 修理により光背が本来の位置に戻ったため、光背の頭光(ずこう)部分も本体頭部うしろの正しい位置に戻った。 台座の背面は別材が打ち付けられていたなどで傷みが激しく、黒漆(くろうるし)を塗り直す大修理を行った。
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