文化財の修理
 
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金銅仏の保存修復
(こんどうぶつのほぞんしゅうふく) 

 更新日06.9.10
屋外の文化財の修理修復

 近年の酸性雨に象徴される大気汚染は、この露座(ろざ)の大日如来のような金属製(青銅(せいどう)に鍍金(ときん))の文化財にも、少なからず影響を及ぼしています。

 この像は、元文二年(1737)に現在の栃木県佐野市の天明(てんみょう)で鋳造されたものです。台座を含めところどころ腐食(ブロンズ病)のために穴やひび割れが生じています。尊顔も鍍金がはげ落ち、変色が進み、大変見づらい状態になっています。また、台座の蓮華部(れんげぶ)が像の重さのために変形しており、このままの状況を放置しブロンズ病がさらに進めば、いつの日か像が台座から転げ落ちることも考えられます。

保存修復の留意点

 この度の保存修復では、以下のいくつかの点に留意して作業を行いました。
 
 科学的処理によりできるだけブロンズ病の促進を遅らせる。
 本像と台座を連結させる腐食が進んだ鉄製の棒を、新たなステン
  レス製のものに置き換える。
 破損して裏側から鉄板と鉄のリベットで修理されている法輪(ほう
   りん)
が、再び破損する可能性があることと、鉄が使用されている
  ために、鉄錆(てつさび)が青銅の躰部に付着し見苦しい状況になっ
  ているため、鉄ではない可逆性(かぎゃくせい)の素材(合成樹脂)
  で恒久的な再修理を行う。
 尊顔が腐食のため見づらい状態なので、顔料(がんりょう)による最
  低限の彩色(さいしき)により見やすい状態に戻す。
 ブロンズ病のため穴があいた部分を、合成樹脂にて補修する。

保存修復後の注意点

 上記のことがらに留意し処理を行いましたが、これらのことも処理の後に像の周囲に適切な覆い屋(おおいや)を建て、風雨から像を守ることを前提に実施したものです。覆い屋がなければ、ブロンズ病の促進を止めるベンゾトリアゾール処理は、雨により短い時間でその効力を失ってしまいます。屋外にある文化財を守ることは、大変難しいことです。

 当寺院でも大日如来坐像が所定の場所に安置された後、速やかに適切な覆い屋が建てられました。

※ 写真をクリ
ックすると大きな画面が見られます
ベンゾトリアゾール処理中
ベンゾトリアゾール処理中
ベンゾトリアゾール溶液の蒸発を補うために、連日頭部から点滴を行う。
像全体を不織布(ふしきふ)で覆い、ベンゾトリアゾール3%程度のアルコール溶液をしみ込ませ、ブロンズ病の進行を遅らせる処理をする。蒸発を防ぐためにラップを巻き、約2か月間処理を続ける。
本体と台座を連結させる鉄製の棒
新たに作製したステンレス製の棒
SUS304のステンレスで作製する
修復後
青銅製の法輪に対して、鉄の素材で、見苦しい不適切な修理が施されている。 エポキシ樹脂とガラスクロスで、裏側から修復する。
尊顔の修復前状況 修復後
青銅の変色により、尊顔が見づらい状態におかれている。
アクリルエマルジョンと顔料による最低限の彩色で、修復前より見やすくなった。
修復後
髻(もとどり)部分の修復前状況
ブロンズ病が進行し、鋳造が他の部分より薄い所に穴があいている。 エポキシ樹脂にタルクと顔料を混ぜたものを充填し成形する。
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